GTSモデルの開発時には、出力、前後G、さらに速いコーナリング速度、最高のドライビング精度も基準リストに掲載されていました。シャシーコンポーネントをスポーティにチューニングしようとしていたデザイナーたちは、カレラSよりもワイドなドレッドを採用することでその目的を達成しました。実際、後輪駆動モデルを含めたすべてのモデルにおいて、リアのトレッドは1,544mmになっています。ワイドなトレッドは、ロールを抑えることからコーナリングの安定性を向上させます。

標準装備されるポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム（PASM）は、ロードグリップを改善してGTSカブリオレとGTSタルガのステアリング精度を高めます。GTSクーペは、車高を10mm低く設定するPASMスポーツシャシーを備えます。さらに、標準装備に追加される統合システムが、GTSモデルの操縦性、ステアリング精度、および俊敏性を改善します。たとえば、GTSモデルのマニュアルトランスミッション仕様車は、ポルシェ・トルク・ベクトリング（PTV）と機械式リアディファレンシャルロックを、PDK仕様車は、ポルシェ・トルク・ベクトリングプラス（PTV Plus）と電子制御リアディファレンシャルロックを備えます。両システムは、コーナリング時に内側の後輪に軽くブレーキをかけ、タイトコーナーの出口における急加速でトラクションを改善します。オプションのアクティブ制御によるロール抑制システムのPDCCは、GTSモデルの高い出力に合わせてチューニングされています。

GTSシャシーは、高い安定性、正確なステアリングフィードバック、そしてニュートラルな操縦性を備えます。GTSモデルには、径を10mm増したフロントブレーキディスク（350x34mm）と911ターボより16%大型のブレーキパッドが装着されています。これらはアルミニウム製の新しいブレーキディスクチャンバーにボルト締めされており、ばね下重量を低減してドライビングダイナミクスの改善に寄与します。

最適化されたベンチレーションとレッドに塗装されたキャリパーを備えたブレーキは、サーキットにおける高い熱負荷の下でもこの上ない制動性能を提供します。GTSモデルにはブラックのセンターロック式20インチホイールが標準装備されます。フロントとリアのセンターロック式ホイールは、911カレラSより0.5インチワイドになり、フロントが9インチ、リアが12インチです。これによってタイヤの接触面が増えてグリップが改善されます。

リアアクスルステアがGTS全モデルに初めてオプション装備されます。50km/hまでの走行速度では、システムはフロントホイールと反対の方向にリアホイールを操舵します。これはホイールベースを短くしたのと同様の効果があり、回転半径が小さくなるため、コーナーでの操縦性がさらに高められるほか、いっそう容易に駐車を行うことができます。

走行速度が80km/hを超えると、システムはフロントホイールと同一方向にリアホイールを操舵します。結果としてホイールベースを延長した場合と同じような効果が得られ、高速道路などでの車線変更時に走行安定性が高められます。フロントアクスルのステリングレシオも10%ダイレクトになります。

PASMとスポーツクロノパッケージのダイナミックエンジンマウントの組み合わせによって、特にドライビングダイナミックが改善されます。電子制御システムがドライブトレインの振動を最小限に抑えるとともに、重量のあるドライブトレインが動いてドライビングダイナミクスに影響をおよぼすのを防ぎます。その結果、ハードとソフトのエンジンマウントのメリットを結合し、未舗装路の走行快適性を損なうことなく荷重移動時と高速コーナリング中のハンドリングを大幅に安定させます。これによってGTS全モデルが、スポ－ツカーに期待されるハイパワーと正確なハンドリングを兼ね備えます。

ドライビングダイナミクスの限界時に車両の自動安定化制御を提供するポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム（PSM）は、走行方向、速度、ヨーレート、横Gを常時モニターします。システムは広範な路面条件で加速時のトラクションを改善します。標準装備のスポーツクロノパッケージにはPSMスポーツモードが新たに追加されます。このモードによって、サーキットや冬季トレーニング中などに911をさらに限界に近づけることができます。スポーツモード機能は、「PSMオン」に比べて垂直軸周りのヨー方向の動きと駆動輪のスリップの許容範囲を広げます。