高められたパワーと効率性

エンジンとドライブトレイン

新型911では、水平対向6気筒ターボチャージドエンジンのさらなる開発に焦点が当てられました。ガソリンパティキュレートフィルター(GPF)による最新の排出基準への準拠に加え、一番の目標はさらなる性能の向上を達成することでした。シンメトリーレイアウトと電気制御式ウエストゲートバルブを備えた新型の大型ターボチャージャー、完全に再設計されたインタークーラーシステム、圧縮の向上とピエゾインジェクターの初採用により、応答性、出力、トルク特性、効率性、回転性のあらゆる分野でエンジンの向上を実現しています。6,500rpmで22kW(30PS)高い331kW(450PS)の最高出力に加えて、エンジンは2300 rpmと5,000 rpmの間で30Nm高い530Nmの最大トルクを発揮します。

2基のシンメトリカルレイアウトによる大型ターボチャージャーが、これまでの同一パーツに取って代わります。コンプレッサとタービンのホイールは反対方向に回転します。新開発の軽量鋳造マニホールドや適合したタービンハウジングのおかげで、タービンインレットおよびアウトレットにおけるエアフローの向上が可能になりました。また、これが効率性や応答性、トルクおよび出力の向上に貢献しています。

ウエストゲートバルブはバキューム式ではなくなり、ステッピングモーターを使用した電気制御になりました。これには、ブースト圧の制御を全体的により高速かつ精確に行えるという利点があります。GPFを装備した911カレラSの最大ブースト圧は約1.2barです。

効率性の向上:エンジンの中央にインタークーラーを移動

以前のモデルと比較して、2基のインタークーラーはエアクリーナーと位置が入れ替わりました。インタークーラーは、リアフェンダーの側面に配置されるのではなく、リアリッドグリル下の中央の位置でエンジンの真上に配置されています。この新しい配置は、冷却風の流出入やエア経路の流速を向上させます。大型のインタークーラーとの組み合わせにより、冷却効率が大幅に向上します。

標準エンジン全体にさらなる開発の焦点が当てられ、細かいディテールまで最適化が施されました。初めてピエゾ制御式のインジェクターが燃焼室に直接燃料噴射を行います。ピエゾインジェクターは、以前のソレノイド式コンポーネントよりもすばやく開閉します。その結果、注入量は1サイクルあたり最大5回の注入に分割でき、圧力レベルは200barを維持します。

燃焼室のスワールを改善するための非対称バルブリフト

可変バルブ制御システムのバリオカムは、初めて小さなバルブリフトで非対称のインテークカムシャフトによるガス交換制御を行います。シリンダーの2つの隣接するバルブは、部分負荷の位置で異なるリフトで開きます。以前は両方のインテークバルブの小さなバルブリフトが一様に3.6ミリメートルでしたが、新型エンジンでは2.0ミリメートルと4.5ミリメートルとなりました。部分負荷のレンジでのデスロットリングやその他のさまざまな細かい最適化が燃料管理と燃焼の向上につながり、燃料消費量とガス排出量が削減されました。

車内外で愉しむエモーショナルなサウンド

911カブリオレの紛れもないスポーツカーサウンドもドライビングプレジャーに貢献しています。そのため、エンジニアはさらなる開発を行う際にインテーク側とエグゾースト側のサウンドのバランスに細心の注意を払いました。より厳しいノイズ要件とガソリンパティキュレートフィルターの設置にもかかわらず、エグゾーストシステムはポルシェ911の特徴的かつ典型的なサウンド体験を提供するために最適化されました。ツインブランチエグゾーストシステムには、マッピング制御のフル可変エグゾーストフラップを備えています。この制御システムは、最適なパワーの上昇とエモーショナルなサウンドを可能にします。フラップはステッピングモーターによる電動式です。これにより、さらにエモーショナルなサウンド体験を生む中間位置を設定することも可能になりました。スポーツエグゾーストシステムも用意されています。標準装備のシステムには2組のツインテールパイプがありますが、スポーツエグゾーストシステムには2本の楕円形のテールパイプがあります。

新開発の8速デュアルクラッチトランスミッション

911カレラSと911カレラ4Sのカブリオレバージョンも最初に8速ポルシェドッペルクルップル(PDK)を装備する予定です。先代モデルの7速トランスミッションと比較すると、新型PDKには多くの改良が施されています。ドライバーは高い快適性、性能および効率性の組み合せを直接感じることができます。すべてのギア比が新しくなっています。1速はよりショートに、8速は以前よりロングになります。こうしてフィナルレシオがよりロングになり、高いギアのエンジン回転数をさらに下げることが可能になりました。その結果、調和のとれたシフトチェンジを実現し、さらなる燃料消費量低減のポテンシャルが高くなりました。最高速度には6速で到達します。

新しいモードスイッチが付いたスポーツ クロノパッケージ

スポーツ クロノパッケージは、ドライビングパフォーマンスとドライビングプレジャーを高めるための最良の選択肢です。このパッケージには、スポーツレスポンススイッチとPSMスポーツモードを備えた新しいモードスイッチ、ダイナミックエンジンマウント、ストップウォッチ、そしてポルシェ トラックプレシジョンアプリが含まれます。ドライビングモードはステアリングホイールの新しいモードスイッチによって選択され、アクティブモードはそれぞれメータパネルに表示されます。

ダイナミックエンジンマウントは、エンジンの重心位置がより中心に移動したこととあいまって、ハードとソフトのエンジンマウントの長所を兼ね備えています。電子制御によってドライビングの快適性と安定性の双方を高めます。PSMスポーツモードは個別に切り替え可能で、スタビリティシステムを特にスポーティなモードに調整します。このモードでは、スポーティなドライバーは安全な環境のもとで自分の車のパフォーマンスの限界にさらに近づくことができます。モータースポーツにインスパイアされたスポーツレスポンススイッチは、エンジンとトランスミッションのレスポンスを20秒間最高のパフォーマンスに設定するオプションを提供します。ポルシェ トラックプレシジョンアプリは、ラップタイムの測定とサーキットでの走行データの記録を行います。このデータはスマートフォンを介して記録および管理することができ、他のドライバーと共有したり比較したりすることができます。

オプションのスポーツ クロノパッケージと組み合わせると、すべての911モデルに標準装備されている新しいウェットモードをモードスイッチで選択することができます。この場合、標準のスポーツ機能もモードスイッチによってのみ有効にすることができます。

前輪の駆動を強化した911カレラ4S

4輪駆動モデルのフロントアクスルファイナルドライブは、クラッチとデフで構成され、水冷式になっています。また、堅牢性と耐荷重性を高めるために強化されたクラッチディスクを採用しています。強化されたフロントアクスルファイナルドライブは、PTM(ポルシェ トラクション マネージメントシステム)との組み合わせにより、雪上や濡れた路面、また乾いた路面でもより優れたトラクションを支援します。ドライビングダイナミクスにおいては、サーキットで走行するための精度、性能、および耐荷重性が最適化されています。

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