8気筒ツインターボエンジンがダイナミクス・効率・エモーションを提供

エンジンとパフォーマンス

新型パナメーラGTSと新型パナメーラGTSスポーツツーリスモは、パナメーラターボモデルと同じV8ツインターボエンジン世代の恩恵を受けます。ポルシェのエンジニアにとって最も重要な開発目標は、最高の効率そして比類ないパフォーマンスでした。新型パナメーラGTSモデルの4リッターエンジンは、6,000~6,500 rpmで338 kW (460 PS) の出力最高値を発揮し、先行モデルの4.8リッターV8を20 PS上回りました。620 Nm (従来よりも100 Nm高い) の最大トルクは1,800~4,500 rpmとなります。新型の8気筒エンジンは、標準装備されているスポーツクロノパッケージの力を借りてパナメーラGTSとパナメーラGTSスポーツツーリスモを停止状態から時速100 kmまで4.1秒で加速します。時速200 kmに達するまでサルーンは15.4秒、スポーツツーリスモは15.6秒を要します。最高速度は292 km/hまたは289 km/h (スポーツツーリスモ) にまで達します。並外れた走行性能に対して、燃費は中程度の10.3 l/100 km (スポーツツーリスモ: 10.6 l/100 km) (脚注を参照); CO2排出量は235 g/km (スポーツツーリスモ: 242 g/km)。

欧州連合および他の採用国における新しいEU排ガス規制では粒子排出量の制限が厳しくなっていることから、パナメーラGTSモデルの導入にともない、また全般的に新しいモデルイヤーから、すべてのパナメーラモデルにガソリン パティキュレート フィルターが取り付けられています。それにより排出基準Euro 6 d-Temp (EU6 BG) および中国のC6bを満たします。この閉鎖型セラミックフィルターはディーゼルエンジン用の微粒子フィルターに似た構造を持ちますが、ガソリンエンジンの要件に適合されています。排出ガスは交互に閉じられた通気孔を通って、微粒子フィルターの壁を通過します。粒子堆積物は自動再生プロセスにおいて燃焼されます。

8気筒エンジンは構造的にはバンク角90度の縦置きV型エンジンとなります。それぞれ50度まで調節可能な4本のインテークおよびエグゾーストカムシャフトはチェーンで駆動されます。最大回転数6,800 rpmの4バルブ方式のエンジンの総排気量は3,996 cm3です。V8ツインターボ ガソリン直噴エンジンの中心となる技術的特徴には、ターボチャージャーをVバンクの内側に収めた新しいセントラル ターボ レイアウト、燃焼室中央に配置されたインジェクター、サーキットにも耐えるオイル循環システム、シリンダーライニングのほぼ摩耗フリーのコーティング、および気筒休止機構があります。

黒いツインテールパイプを備えた標準装備のスポーツエグゾーストシステムと、エグゾーストフラップのモーターとコントローラーの特別に調整された相互作用により、V8エンジンは特に印象的で重厚感のあるサウンドを発します。

センターターボレイアウトが低速での高トルクを保証

新型パナメーラGTSモデルのV8エンジンは、高回転域および高出力域まで一気に吹け上がります。同時に8気筒エンジンは低回転数ですでに最大限のトルクを発揮します。この駆動特性の大部分がセンターターボレイアウトのツインターボチャージャーに起因します。技術の粋を集めて設計されたツインスクロールターボチャージャーが、V8の燃焼室に圧縮空気を供給します。逆向きに回転する2つのタービンはすでに低回転域で最大限のトルクを発揮します。ターボチャージャーの最大過給圧は0.8 barです。ターボチャージャーごとに、排出ガス流によって駆動されるコンプレッサーが吸気を圧縮します。この処理空気は、エンジンレスポンスを最適化するためにデュアルブランチシステムを通って導かれます。空気は外側から入り、V8の上流側に設けられた左右のインタークーラーを通過した後に、各スロットルバルブを通って左右のシリンダーバンクに流れ込みます。インタークーラーが圧縮によって上昇した処理空気の温度を再び大幅に下げます。こうして空気の密度が上がることでシリンダーの酸素による充填度が上がり、結果として効率性が向上することになります。

中央配置のインジェクター

すべてのパナメーラエンジンに共通する特徴の一つに、高圧インジェクションバルブを備えたインジェクターが燃焼室中央に配置されていることが挙げられます。新型パナメーラGTSモデルのV8エンジンでは、7つのインジェクションホールを備えたバルブが使用されています。噴射流が個別に方向調整されていることで燃焼が最適化され、それにより低排出ガスおよび高効率が保証されます。これはすべての動作段階で同様です: ポルシェはインジェクターを使用して、エンジン始動、触媒コンバーターの加熱、暖機時、および暖機状態のエンジンのために個別の噴射プログラムを実施します。シリンダーバンクごとに高圧ポンプが使用され、その最大噴射圧力は250 barです。

Vバンク内側に配置された触媒コンバーターによる排出ガス後処理

V8エンジンには、プライマリー触媒コンバーターとメイン触媒コンバーター、ならびにフロントサイレンサーとリアサイレンサーを備えるデュアルブランチエグゾーストシステムが装備されています。8気筒エンジンは、センターターボレイアウトと同様に、触媒コンバーターをVバンクの内側に配置するように設計されています。この構成によってエミッションコントロールシステムは非常に素早く最適な動作温度に到達することができます。さらに、エンジン始動時にターボチャージャーのウエストゲートバルブが開くことで触媒コンバーターの加熱が促進されます。

シリンダーライニングの鉄合金が磨耗とオイル消費を削減

V8エンジンのハイライトの一つに、鋳造アルミニウムブロックのシリンダーライニングの鉄コーティングがあります。これにより内側の摩擦、摩耗 (燃料の品質が良くない場合も同様)、およびオイル消費を大幅に低減することができます。製造工程においてシリンダーの表面に大気プラズマ溶射法で非常に丈夫で低摩擦の鉄コーティングを施します。層の厚さはわずか150ミクロンです。ピストンリングのリターンポイントにおけるライニングの磨耗は、鉄合金によってほぼ解消されました。新しい合金に合わせて、軽量の鋳造ピストンの設計には調整が施されています。ピンストンリングには窒化クロムコーティングが施されており、これは鉄コーティングと完全に調和しています。このようにあらゆる手段を組み合わせることで、オイル消費も先行モデルと比較して50%低減することができました。

サーキットでも確実なオイル供給

全てのポルシェはサーキットでも安定していなければなりません。新型パナメーラGTSモデルはこの課題にも、革新的なオイル循環システムなどで自信をもって対応しますその設計レイアウトにより、極端な横方向および前後方向の加速度であっても補整されます。特別な特徴として、オイル通路がエンジンのオイル供給とシリンダーヘッドのオイル供給とに分割されていることが挙げられます。オイル通路の供給断面は、オイル循環システム内の各コンポーネントの要求に合わせてしつらえられています。エンジン始動時には、これが油圧上昇時間にプラスの効果を与えます。急速な圧力上昇はオイルポンプ内のチェックバルブによってサポートされます。このチェックバルブはVバンク内側の大量のオイルがオイルパンに戻って空回りすることのないよう機能します。油圧そのものは可変ベーンオイルポンプによって上昇し、バルブによって特性マップに基づき制御されます。このコントロールバルブには油圧リミッターが統合されており、エンジン始動時および外気温が低い時に自動的に作動します。またVバンク内側の中央に配置された電子スイッチングバルブは、ピストン冷却に関連するマップ制御されたピストン用オイルジェットノズルを必要に応じて制御します。この制御を介して攪拌ロスが低減し、オイル循環量が制御されます。たとえニュルブルクリンク北コースでの走行であっても、前後方向と横方向の高い加速が可能です。

標準装備: スポーツクロノパッケージとスポーツレスポンスボタン

新型パナメーラGTSモデルでは、標準装備のスポーツクロノパッケージにローンチコントロールとモードスイッチ、マルチファンクションステアリングホイールのスポーツレスポンススイッチが含まれており、サーキット走行のために完璧に調整されています。モードスイッチはステアリングホイール上に人間工学に考慮して配置されているロータリースイッチにより、4つの走行モード (ノーマル、スポーツ、スポーツプラス、インディビジュアル) へのダイレクトなアクセスが可能です。サーキットに理想的なのがスポーツプラスモードです。その際パワートレインには、最良のレスポンスおよび最大の加速性能の観点において最適なプリロードがかけられます。さらにアクティブサスペンション コンポーネントである3チャンバーエアサスペンション、ポルシェ アクティブサスペンション マネージメント (PASM)、オプションのシステムであるポルシェ ダイナミックシャシー コントロール スポーツ (PDCC Sport)、ポルシェ トルク ベクトリング プラス (PTV Plus)、およびリアアクスルステアで、最高のパフォーマンスを発揮するよりスポーティなモードに切り替えることができます。モードスイッチの中央にはスポーツレスポンスボタンが付いています。このスイッチを押すと、パナメーラの最大性能を20秒間引き出すことができます。この場合、エンジンのレスポンスは特別にダイレクトかつ瞬時的になります。PDKもスポーツプラスモードよりさらにダイナミックなシフトマップに変わり、直接3,000 rpm~6,000 rpmの回転域に切り替わります (フルスロットルでスイッチを押した場合を除く)。シフトチェンジはずっと後になってから実行されます。

最高の快適性と俊敏性を兼ね備えたポルシェ8速PDK

すべてのパナメーラ派生モデル同様、新型GTSモデルにも8速ポルシェ ドッペルクップルングが装備されています。基本的に8速PDKでは7速と8速が減速するオーバードライブ段として設定されているため、ギア比の最適な広がりを可能にし、また最高の快適性と俊敏性を保持しながら効率的な燃料消費を実現します。最大速度には6速で達します。パナメーラの8速PDKでは、次のギア段が瞬時に作動できるよういわばスタンバイして待っているため、動力の遮断なくシフトすることができます。したがってスポーティでありながらも非常に快適なPDKのシフト特性は、新型パナメーラGTSモデルのダイナミックな基本設計に完璧に調和します。

電子制御の多板クラッチを備えたアクティブ4WD

パナメーラGTSおよびパナメーラGTSスポーツツーリスモの性能はポルシェ トラクション マネージメント (PTM)、つまり電子制御およびマップ制御の多板クラッチを備えたアクティブ4WDシステムを介して、路上にもたらされます。多板クラッチはそのつどの運転状況に合わせて、エンジンの動力をフロントアクスルとリアアクスルに最適に分配します。その際PTMセンサーが恒久的にホイール回転数、前後方向と横方向の加速度、および舵角をモニターします。PTMは乾いた路面だけでなく、濡れた路面や雪道でも完璧なパフォーマンスを実現します。

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